待機児童問題をきっかけに注目を集めた保育士の人手不足や経済的苦境。ぎりぎりの生活を送る当事者からは「子供好きなのに我が子を持つ余裕もない」と悲鳴が上がります。参院選で賃金引き上げなどがテーマになりますが、現場には「やりがい」を理由に処遇改善を訴えにくい雰囲気もあります。関係者は「選挙がこうした雰囲気を変えるきっかけになってほしい」と話します。

 福岡県の男性保育士(23)は午前7時に出勤し、午後9時帰宅という激務にもかかわらず、手取りは月15万円どまり。同じ保育士でパートで働く妻(24)は手取りで月10万円。4月に結婚したばかりですが、それぞれ学生時代に借りた奨学金の返済もあり、外食する余裕もありません。

 10年ほど先輩の保育士の手取りは17万円。今でさえぎりぎりの生活が、今後もほとんど改善しないと思うと暗たんとした気持ちになるといいます。子ども好きで保育士になったのに、経済的理由で自分の子を持つ願いすら思うようにかなえられません。「働き続けても未来がない」。男性は途方に暮れています。

 男性の母も保育士です。共働きでしたが家計のやりくりに苦労する背中を何十年も見てきました。それだけに「今回は一時的に盛り上がっているだけ」と感じており、すぐに処遇が改善されると思えないといいます。

 賃金構造基本統計調査(2015年度)によると、保育士の月給は約22万円と、全産業平均より約11万円も低い金額です。激務に見合わないとして離職者も後を絶たず、資格があるのに働いていない「潜在保育士」は全国で約80万人(2014年度)との推計もあります。

 ある20代の女性保育士は近々出産予定で産休中です。ただ職場の人手が足りず、本来なら来年夏まで取れるはずの育休の一部返上を余儀なくされ、来年春に前倒しで復職するといいます。

 この6月にも体調不良を理由にした退職者が出ました。1歳児のクラスは現在、保育士が足りないままになっています。監視が手薄になって大きなケガや事故につながる危険性を考えると、今も「休んでいていいのだろうか」と罪悪感に襲われます。

 しかも近所の認可保育所には空きがなく、復帰後は我が子を料金の高い認可外施設に預ける可能性が高いです。「よその子の面倒を見るために高いお金を払って我が子を預けるなんて」と心中は複雑。「辞めた人が『月5万円増えても戻らない』と言うほどきつい。給料が数千円上がったところで何の解決にもならない」と言い切ります。

 全国保育士会の村松幹子副会長は保育士の待遇がなかなか改善しない理由を「社会奉仕の側面が強調されることが多く、『子どもを守るというやりがいがあるのだから、待遇の話をすべきでない』という雰囲気が業界全体にある」と説明します。

 参院選では保育士の処遇が街頭演説などでも取り上げられています。村松副会長は「職員の給与アップなど処遇改善は後回しにされてきたが、選挙は保育士の働き方を大きく変えるいい機会」と期待しています。